ホームセンターなどに売られている「ピアノ線」はピアノの弦として使われているわけではありません。
ピアノの弦は「ミュージックワイヤー」といって、ピアノ線よりもずっと強度の高いもので、100kgの負荷にも耐えられる丈夫なものです。それでもピアノの弦は切れることがあります。
ピアノの弦の強度や弦が切れる原因などについてまとめてみました。
ピアノの弦に使われるのは、ピアノ線ではなくミュージックワイヤーです
皆さんはグランドピアノの中をのぞいたことがありますか?
見た目は木でできているピアノですが、中部にはびっしりと金属製の弦が張られていて、まるで精密機械のようになっています。
この弦こそが、音の発生源。ピアノの音を出しているところです。
ちなみに、「ピアノ線」という名前でホームセンターなどに売られている金属製のワイヤーですが、実際にピアノに使用されているわけではありません。
例えば、「破断限界」と言ってワイヤーの両端を引っ張り、どれくらいの力でワイヤーが切れるかを調べる調査では、ピアノ線だと20kg前後で切れてしまいますが、ミュージックワイヤーは100kg以上の力に耐えることができます。
アップライトピアノの重さは200??300?ですから、単純に考えると、ミュージックワイヤーが3本あれば、アップライトピアノを吊り上げることができるととらえることもできます。(良い子はやらないでくださいね)
ピアノには「ミュージックワイヤー」と呼ばれる、ピアノ線よりも純度が高い炭素鋼から作られたものが使われており、鋼の中でも最高レベルの強度を誇ります。
ピアノの弦に強度が必要なわけ
しかし、ピアノの弦にはなぜこんなにも強度が必要なのでしょうか?
それは、ピアノの弦が常に張られたままの状態だからです。
例えばギターやバイオリンなど他の弦楽器は、演奏しない時にはネジを回して弦を緩めます。
そうすることで弦を休ませ、弦が伸びてしまうのを防ぐのです。
しかし、ピアノは大きく、張られている弦の数も約230本。
弾かない時に弦を緩め、弾くときに張るのは現実的ではありません。
調律師などプロによって緩められることはあっても、基本は出荷されたら最後、弦はその音が常に出るよう、ピンと張られたままなのです。
ピアノの弦の張力は、1本あたり60?100kgと言われており、全弦の張力を合わせると、なんと20tもの力になるそうです。
その負荷に耐えられるよう、ピアノの弦は高い強度を持つ必要があるのです。
強度が高いピアノの弦でも切れることがあるの?
ピアノに関する都市伝説に、ある夜家主が家で寝ていると、夜中に「バーン」とものすごい音がしたので、飛び起きて音のした部屋に行ってみると、その部屋に置いてあったグランドピアノが粉々に壊れていた、という話があります。
これは、ピアノの弦の圧力にフレーム(弦が張られている金属板)が耐えられず起こったようなのですが、本当にこんなことが起こるのでしょうか?
答えは、確率は0%ではないが、かなり珍しい(宝くじ高額当選レベル)事象のようです。
弦が切れる原因には、
- 金属疲労
- さびによる浸食
- 演奏、調律、ピアノの移動などで過度に負担がかかった場合
- 設計上の問題
などがあります。
演奏による負担とは、フォルテッシモなど強い音を出す曲ばかりを弾いたり、演奏者の打鍵の力が強い場合。
設計上の問題とは、弦を支えるフレームがもともと脆弱だったなどの場合などです。
上記の都市伝説のように一度に弦が切れることはありませんが、1本弦が切れると他の弦の負荷が大きくなるので、早めに調律師に連絡した方がよいでしょう。